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藤村幸司
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日本語学的『オズの魔法使い』
2007-11-18 Sun 10:10
きのう、ミュージカル『ウィキッド』の予習のために、映画『オズの魔法使』(←映画は、「い」の送り仮名がないのが正式タイトルです)を見たと書きました。このタイトルについて、日本語学的に、興味深い分析をした先生がいます。早稲田大学名誉教授で、日本語学者の森田良行さんです。その著書『日本語質問箱』(角川文庫)の中に、「オズの魔法使いと、魔法使いのオズは同じか?」という項目があるのです。

その文章の導入はこうです。原題『The Wonderful Wizard of Oz』は、『オズの魔法使い』と訳されているが、翻訳書の中には、『すばらしい魔法使いオズ』というのもある。オズとは魔法使いなのだから、「将軍の徳川吉宗」や「作家の夏目漱石」のように、肩書きや職業が前で、氏名は「の」の後に来るのが、本来の日本語のルール。だから翻訳書は『魔法使いのオズ』としたのだろうと推測。そのうえで、ではなぜ、映画は『オズの魔法使い』としたか、単に原題の直訳なのかを分析しよう・・・というものです。

実は、私はこの文章を読んだ後に映画を見たので、この点についても注意しました。また、児童文学にも目を通しました。すると物語の中には「オズ大魔王」という、名前としてのオズも、確かに出てきますが、その大魔王がいるのが「オズの国」なのです。だから「オズの国の魔法使い」と考えれば、タイトルの『オズの魔法使い』も自然です。この場合、オズを名前と決めつける必要もないと思うのです。

でも、そう言ってしまうと終わりなので、さらに森田先生の論を読み進めていきましょう。「渥美清の寅さんは実に愉快だ」「ピーター・フォークの刑事コロンボ」のように、一時的にその役を演じたり、ある特別な状態にたまたまあって、それがその人の一大特徴になっている場合には、この種の言い方が可能になると解説。さらに子どものけんかで「太郎の嘘つき!」「次郎の弱虫!」など、人間の持つ隠れた一面を取り立てて相手にぶつけ揶揄したり、気づかなかった相手の一面を知って驚きあきれたりする場合の文型のひとつでもあると指摘しています。

この言い方について、森田先生は、「修飾語など付けなくても、じゅうぶんワンダフルな凄まじさが現れてくるのが不思議だ」と書いています。だから、『オズの魔法使い』も、オズが演じる魔法使いという意味だけではなく、オズの隠れた側面、魔法使いとは真っ赤な嘘、ただの爺さん、それでもやっぱり見事な腕前を発揮する恐るべき魔法使いよ!という発見の喜び、さらに驚きと感嘆のないまぜになった万感こもる感情が、邦訳『オズの魔法使い』に集約されているのだと、結論づけています。

たった7文字の作品タイトルながら、こんな深い分析の仕方もあるのかと、感心したしだいです。そう思って、もう一度、映画を見たり、本を読んでみると、おもしろいかもしれませんね。


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