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藤村幸司
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必要なのは聞く力(2)
2008-01-26 Sat 19:54
きのうのつづきです。

6年前、串田和美さんと緒方拳さんの『ゴドーを待ちながら』を観て、「聞く力」があってこその「喋る力」だと感じたのですが、きょう読んだ演出家・栗山民也さんの著書『演出家の仕事』(岩波新書)の第1章・「聞く」力には、こんなことが書いてありました。

「相手役のせりふをよく聞くこと、相手の声をよく聞いて、それで動いた自分自身の気持ちが次のせりふになる」と、稽古場で何度繰り返したかわかりません。それはなぜか。日本の俳優には、そのことが一番欠けていることだからです。(中略)とにかく自分のせりふだけを覚えることが大事。そこから自分のせりふの数の多少を問題にしたりする。そんな俳優に、よくめぐり合いますが、そこに何の意味があるでしょう。そうではなく、相手のせりふがあって、それが声でこちらに投げかけられるから、自分のせりふが生まれるという、それだけの関係をしっかりと捉えることが、俳優のまず第一の仕事なのです。(以上引用)

さらに『演出家の仕事』の第2章を読み進めていて驚きました。そこには、栗山さんが学生時代、早稲田大学演劇学科の授業で最初に読むようにと与えられた戯曲が『ゴドーを待ちながら』だと紹介されているのです。さらに、演出家としての初めての仕事も『ゴドー~』だったそうです。もしかしたら『ゴドー』が「相手役のせりふをよく聞くこと」の重要性を栗山さんに教えたのではないかと勝手に思っています。それならば私も著名な演出家と同じことを感じていた・・・と、一人悦に入ったりもして。

昔から「話し上手は聞き上手」と言いますが、「聞く力」は、我々アナウンサーにとっても、「話す力」よりも大事ではないかと思うのです。自分の聞きたいことだけを一方的に質問するインタビュー、聞き手を意識しないアナウンス、相手を無視した対談、気持ちのこもらない相づちなど、山ほどあります。これは他人事ではなく、私も時間や段取りを考えていて、ついつい「聞くこと」がおろそかになってしまった経験があります。失敗を反省すると「喋る」ことより「聞く」ことに問題があるほうが多いものです。

後輩たちを指導していると「うまく読もう」という意識が先立って、まったく内容が伝わってこない読み方をする人がいます。私も若いころは先輩から「うまく読もうとするな」と言われましたが、今になってようやくその意味が分かるようになりました。演劇の世界にも、これと同じことがあることを栗山さんは書いています。

せりふは人間の言葉でなければなりません。つくられたり。飾られた言葉や声は、嘘なのです。「どう美しく響かせようか、どうキレイに発声しようか」と思った瞬間から、人間の声ではなくなってしまいます。(以上引用)

『演出家の仕事』は、演出のエピソードもふんだんで、舞台好きの人にはぜひ読んで欲しい一冊ですが、喋ることを仕事にしようと思っている若い人たちにも勧めたい本です。


『アナウンサー藤村幸司ドットコム』

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